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乾坤一擲(けんこんいってき) 「海賊とよばれた男」  [読書]

「海賊とよばれた男」、映画はこれからですが、本を読んだ感想です。

読書は毎日の通勤時間にあてているので、ちょっと時間がかかったのですが、後半の、タンカー日章丸がイランに向かう場面からは、先が気になって一気に読みました(笑)

出光佐三、この物語のモデルになった人物ですが、実は生家がわたしの田舎の近くでした。
そういえば、父は出光のガソリンしか使わなかったな、と思い出しました。
わたしが別のガソリンスタンドで入れたことが分かると「お前、○○で入れたんか。ウチは出光やから・・」と言われたこともありました。
今思うと「出光佐三」は郷土の誇りだったのだと思います。そんなことも、父が生きていたら話したかった、と思いました。

主人公の国岡鐵造(出光佐三)が、何度も絶体絶命を乗り越えていくのは、知略と人脈があったことが大きいと思います。
人脈といっても、彼の正論や道義を正す迫力に、憂国の日本人が「彼だったらこの日本を何とかしてくれるのではないか」という一縷の希望を見出したからだと思います。

大学時代、家庭教師として入った先の主・日田重太郎は骨董収集を趣味とする風流人でしたが、鐵造の起業に資金面で大きく関わり「国岡商店(出光興産)」の基礎を築いた恩人でした。
国岡商店は幾度も倒産の危機的憂き目に合う中で鐵造を支え、次のように言った日田の言葉は、鐵造生涯の「覚悟」として刻まれたと思います。

「三年であかんかったら五年でやってみいや。五年であかんかったら十年やってみいや。わしはまだ神戸に家がある。あれを売ったら七千円くらいの金はできる」
「なあとことんやってみようや。わしも精一杯応援する。それでも、どうしてもあかなんだら――」
「一緒に乞食をやろうや」

日田重太郎は鐵造に自分の夢を託したと思います。

鐵造の自分の信念を曲げない、妥協しない性格は、石油連盟と結びついた日本の官僚組織とはことごとく対立していたことが描かれています。
日本の石油業界とメジャーが一緒になって国岡商店をつぶそうとまで追い詰められます。

もし鐵造が外資に屈していたら、果たして日本は今のような経済発展を遂げただろうか、と思うところがありました。
戦後GHQは日本の工業力をつぶして、農業国にする意図があったと書かれています。
そのために日本の石油産業を破壊してしまおうとしていたようです。
石油業界の6割はメジャーの軍門に下っていたと言います。

「石油のために戦争を始めて、石油がなくて戦いに敗れ、今度は石油によって支配されるわけか」
鐵造が言った言葉が象徴的です。

石油を求めメジャーに戦いを挑んだイランとの取引は、鐵造にとっては「イラン人の、イラン人による、イラン人のための石油」という深い意味もありました。

当時のイランは石油資源をイギリス資本のアングロ・イラニアンに支配されていました。

首相のモサデクは国民の熱狂的な民族主義の高まりの中、イギリスとの十分な交渉も出来ないままアングロ・イラニアンから石油利権を取り戻し国有化してしまいます。そのためイランはイギリスに経済封鎖され国際的に孤立していたのでした。
このあたりの微妙な国際情勢、例えばアメリカやロシア(当時はソ連)との関係から、イギリスはイランに対して軍事的に制圧できない状況など、戦後の世界情勢の変化がよくわかりました。

国有化されたイランの石油は各国との直接交渉が可能になるのですが、契約が結ばれることはあっても、イギリス海軍の妨害を恐れてどこもタンカーを派遣することはなかったのです。実際にタンカーをイランに持ち込んだイタリアは、イギリス海軍に拿捕され積んでいた石油を没収されるという事件まで起きています。
そのような中、鐵造はにやりと笑い、
「皆が恐れるからこそ、行くのではないか」と言ってのけます。

当時の日本はイランとの国交はなく秘密裏に国岡商店とイランの交渉が進められるのですが、見事イギリス海軍を出し抜きイランの石油を持ち帰った日章丸のニュースは、世界的な衝撃として報じられました。
石油をめぐる世界情勢、また著者の主張も手に取るようにわかる内容でした。

その後のイラン情勢は、メジャーの逆襲を受けアメリカによるかく乱から親米の王政、その後の民主化など、今に至るイランの歴史の流れがわかりました。

出光佐三の生涯はいつも命を張った「海賊」だったと思います。
映画も楽しみです。

追記
出光興産と昭和シェル石油との合併交渉が泥沼化していますね。
創業家側の言い分「企業文化が違い過ぎる」は、分かりますが、佐三の功績は、彼が時代の寵児として存在したから成し遂げられた、とみるべきではないのか、株式非公開で外資を入れない企業体質は、デフレ不況の中次第に行き詰っていったと思います。
出光は2006年東証一部に上場しますが、今の時代の経営を模索すべきではないかと思いました。

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